たくさんの魅力を1ページに凝縮。これがデジタル漫画制作の現場だ!【第2回】

デジタル漫画の現場紹介第二弾!
第1回ではラフ画から下描きの工程をご覧いただきました。

あれから一週間たち、下描きが完成!(クリックで拡大できます)

前回のラフのままでは宗像大社と宮地嶽神社の見分けがいまひとつ分かりにくい、と感じたので修正。宗像大社はお社を、宮地嶽神社は光の道をクローズアップしました。コマ割りも見直し、一番下にガイドや自転車レンタル等の紹介も詰め込んでいます。

下半分を修正・変更したので、一度ここでクライアント様にご確認を。GOサインをいただいたら、先に進みます。

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次の工程にうつる前に、下描き作成の途中を少しご紹介。
背景を描くときは遠近感を出すため「1点透視図法」や「2点透視図法」などを使いますが、この工程が一番デジタル作画やってて良かったー!と切に感じる部分です。紙に鉛筆で描いていたときは大っ嫌いだったパース作業が、デジタルのおかげでぐんと楽になりました。

↑増殖法を使って、パースのかかった四角マスを増やす作業です。

↑キャラクターに動きをつけ、イメージしやすいようにします。

的確なまっすぐ線がスーッとひける。きちんとパースがかった背景画が描ける。当たり前のようですが、ペンを握る漫画家にとっては一番練習が必要な部分。その正確性をパソコンにまかせることで、誰でもプロの仕上がりを目指すことができるようになりました。

一方で的確な定規がジャマになることもあります。何かを強調したいとき、現実ではありえないシーンが描きたい時などはフリーハンドの出番。画像はボツになった宮地嶽神社。しめ縄を強調するため、写真よりもグッと突き出たアングルで描いています。

【工程4】ペン入れ

GOサインをいただいて、いよいよペン入れに入ります。
ラフ→下描き→ペン入れ、この流れはアナログでもデジタルでも変わりません。効率が悪いように見えますが、きちんとラフや下描きを描く方が途中の修正・変更もしやすく、結果的に仕上がりが速くなります。

 

温泉に入っている女性の後ろ姿をペン入れしていきます。まず下描き線の不透明度を落とし、かすんでほとんど見えないくらいにします。

 

下描きをきちんと描いているので、それを参考にしながらガリガリ描いていきます。「下描きの線をなぞる」のがペン入れではありません。下描きをなぞると線が一気にウソくさくなります。あくまでも下描きは参考程度にしながら新たに線を作る。その工程が「ペン入れ」です。

 

温泉女性のペン入れが終わりました。次に背景にうつります。

 

人物と同じように背景の不透明度を落とし、別レイヤーに背景のペン入れをします。

 

Tarou’s Houseの魅力のひとつは、近くにある「やまつばさ温泉」。陶器でできた一人用露天風呂の画像を参考にしながら描いていきます。陶器の曲線は曲線定規(紫の線)を使って描きます。

 

定規を使えば、どんな曲線もきれいに描くことができます。

 

「Ctrl」キーを押すと自由変形が可能になるので、微妙な角度はここで調整。

 

角度調整後にレイヤーを複製。同じ曲線をふたつ作って…

少しずらせば、陶器の縁が完成です。

 

描き足してそれらしくなってきました。

 

白黒のご依頼の場合は、ここで画像のように影や水の流れを描き入れて仕上げます。今回はカラーの予定なので必要ありません。影などは全て色塗りの時に表現します。

 

続いて露天風呂なので、周囲の木々を描きます。ここでは「樹木」の素材を使用しました。ペンを滑らせるだけで木らしいシルエットのできあがり。

 

白のエアブラシで湯気を描き、温泉感を出します。

 

人物にも湯気が当たっているので、白のエアブラシで描き足します。はみ出した部分、描き足りない部分など綺麗に整えて完成。夜空などは彩色の段階で描きいれます。

 

ペン入れはこのような作業を進めていきます。ご依頼の際にカラーなのかモノクロ(白黒)なのかをお聞きするのは、カラーとモノクロでペン入れの仕方が全く違うからです。今回はややモノクロ寄りのペン入れをしましたが、カラーの場合はもっとシンプルな線画。影も湯気も「線」でなく「色」で表現するためです。

 

第2回は以上になります。
第3回ではペン入れを全て終了させたところからのスタートです。